今回は、犬のトレーニングを行っていく上で、とっても大切で学習理論の基本の基でもある『古典的条件付け』に付いて紹介したいと思います。
皆さんは、古典的条件付けって聞いた事ありますか?(レスポンデント条件付けとも言われています。)
僕も専門学校に入って行動学の授業の中で習ったのですが、当時は全く理解出来ていませんでした。
授業の中では、無条件刺激だとか条件反応だとか中性刺激だとか難しい言葉が出てくるし「はぁ?」と思って授業を受けていました。
今回は、そんな難しいイメージがあり、僕もとっても苦手な『古典的条件付け』ついて深堀していきたいと思います!
古典的条件付けって何??
古典的条件付けとは、1903年に生理学者であるイワン・パブロフが発見した学習プロセスになります。
皆さんも『パブロフの犬』という言葉を一度は聞いたことはありませんか?
パブロフは、犬がエサを見ると唾液を出す生理的反応に注目しました。
ちなみに、生理的反応とは唾液、心拍、発汗、瞳孔反応などなど自分じゃコントロールの出来ない体の反応の事を言います。
パブロフは、犬にベルの音を聞かせてからエサを与える事を何度も繰り返しました。
すると、今まではベルの音に何の反応もしなかった犬がベルの音を聞いただけで唾液が出るようになったのです!
これは、生まれた時から強い反応を示す無条件刺激(エサ)と、もともとは何でもない条件刺激(ベルの音)を一緒に与える(対呈示する)事で、条件刺激(ベルの音)に対しても反応が現れる(唾液が出る)という学習プロセスが古典的条件付けと言われています。
古典的条件付けの例
古典的条件付けは、犬だけの学習プロセスではありません。
人間も犬も猫も他の動物達も古典的条件付けによって、無意識に学習を繰り返しているんです。
例えば・・・
・梅干しやレモンを見たり想像すると、口に入れていないのに唾液が出てくる
・ノンアルコールビールを飲んだのに、酔っぱらった感覚になる
・大好きなアイドルが飲んでいるジュースが美味しそうに感じる
・パトカーを見ると、ちょっとソワソワする・・・などなど
勿論ですが、人によっても犬によっても学習は違います。
生活環境が同じでも全く違う学習をしている場合もあるので、ご家族の中でも学習の違いを探してみるのも面白いかも知れませんね?
逆行条件付けもあるけど・・・
パブロフの犬では、中性的な条件刺激(ベルの音)の後に無条件刺激(エサ)を与えていました。
無条件刺激(エサ)を与えてから条件刺激(ベルの音)を与える逆行条件付けという条件付けもあります。
ですが・・・
逆行条件付けでは、パブロフの犬の実験の様に唾液を流す様にはならず、逆行条件付けの効果は薄いと言われています。
恐怖条件付け
恐怖条件付けという恐ろしい名前の条件付けも存在します。
恐怖条件付けとは、恐怖や苦痛や体調不良などが関連する学習になります。
例えば・・・
・生牡蠣を食べて体調を崩してから牡蠣が食べられなくなった
・歯医者さんのドリルの音を聞くとゾクゾクする
・ドッグランで犬に追いかけ回されてから、犬を怖がるようになった・・・などなど
恐怖条件付けの特徴
また、恐怖条件付けには古典的条件付けとは少し違う特徴があるようです。
【恐怖条件付けの特徴】
・たった一度の経験でも学習される
・味覚や消化器官など特定の刺激と反応の組み合わせで学習されやすい
・刺激と反応の間隔が数時間離れていても学習される
・消去(忘れる)される事が難しく、いつまでも残ってしまう
犬の攻撃行動の多くは、恐怖が関わっていると言われています。
(今まで会ってきた犬達の中で、恐怖が関わっていない攻撃行動をする仔は、正直見たことがありません・・・)
また、恐怖が関わっている攻撃行動は一般的に治しづらく、個人的には攻撃行動はゼロにならないと思っています。
消去
消去とは、文字通り条件付けが無くなってしまう事を言います。
一旦条件付けが成立した条件反応において、無条件刺激を与えないで条件刺激だけを繰り返し呈示する事で起こります。
例えば、ベルの音で唾液が出るように条件付けされた犬がいたとします。
その犬にベルの音だけを聞かせ続け、ベルの後にエサを出す事を止めます。
すると、最初こそベルの音に条件反応を起こし唾液が出るものの、次第にベルの音に条件反応を起こす事が無くなり、唾液も出なくなります。
普段行っているトレーニングでも「ちょっと変な方向に進んでいるなぁ・・・」と思ったら、そのトレーニングを一切行わないようにするなんて事もします。
犬が忘れたころに、またトレーニングを再開してみるなんて事をすると意外と軌道修正出来たりするんですよ。
消去バースト・・・
一度条件付けされた反応の消去を行う過程で、条件付けされた反応が一時的に激しくなり頻度や勢い(強度)が増す事があります。これが消去バーストになります。
例えば・・・
・自動販売機にお金を入れてボタンを押したのに、ジュースが出てこなかったのでボタンを思いっきり叩いた
・ボールペンが突然出なくなったので紙にグリグリ押し付けてみた
・要求吠えを無視していたら、普段より激しく吠えてズボンの裾まで噛んできた・・・などなど
トレーニングにおいても消去を使う場合が多々あります。
対象の行動がどれだけその犬に定着しているかにもよりますが、消去を使う場合は必ず消去バーストが起こる事を考えなくてはいけません。
何故かというと、消去バーストが起こっている最中に犬が望んでいる結果(報酬)が得られた場合、より強い行動として犬達は学習をしてしまうからです。
例えば、飼い主に対して要求吠えをする犬がいます。
犬が、要求吠えを始めた瞬間から飼い主は無視をしなければなりません。
(※この場合の無視とは、犬に声をかけるだけでなく、犬を触る、犬を見る等の犬に対して反応する事全てになります。徹底をして犬に反応しない事が大切になります!)
ですが、犬も必死に訴えかけてくるので吠えが大きくなるだけでなく、飛び付いたり、引っ搔いたり、服を引っ張ってみたりと沢山の事をチャレンジしてきます。
まさに消去バースト真っ最中です!
この時に飼い主が我慢しきれなくなってしまい犬に反応してしまうと、犬は報酬を得られたことになるので次回からはより大きい反応を示す様になってしまいます。
※飼い主さんの中には「うるさいっ!!!って言っているんだけどね~」と言われる方がいますが、飼い主の反応を得られた事には変わりがないので逆効果の場合が多いです。
なので、消去を行う場合は、その犬の消去バースト時の行動や人間側が徹底して対応出来るのかどうか等を考えた上で行うべきだと思います。
まとめ
いかがでしたか?
行動学を勉強すると必ず古典的条件付けが出てきます。
そして必ずと言っていいほど「はぁ?」ってなると思いますw
専門学生だった頃の僕でも理解出来るように、難しい言葉は使わないように書いてみました。
現役専門学生さんが、もし読んでくれたら嬉しいなぁと思います。
質問・疑問があったら是非コメントを送ってください!
次回のブログでは、古典的条件付けを使ったトレーニングを紹介したいと思います!
是非ご覧くださーい(^^)/